パリで開かれた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第35回世界遺産委員会は、東京都の海の沖にある小笠原(おがさわら)諸島の世界自然遺産登録を決定した。また、津波被害を受けた岩手県にある「平泉(ひらいずみ)の文化遺産」の世界文化遺産への登録を決定した。
日本の自然遺産は、青森(あおもり)県と秋田(あきた)県にまたがる白神山地(しらかみさんち)、鹿児島県の屋久(やく)島、北海道(ほっかいどう)知床(しれとこ)に続いて、4カ所目となった。
小笠原諸島は東京都心から約1000キロ南の太平洋上にある。南北約400キロに及ぶ、大小30の島々で構成される。登録地は陸海合わせて約7940ヘクタール。大陸と地続きになったことのない「海洋島」で、動植物が独自の進化を遂げ、「進化の実験場」「東洋のガラパゴス」と呼ばれる。
カタツムリなどの陸産貝類100種、植物161種、昆虫379種は、他の場所では見られない固有種だ。特に、陸産貝類はガラパゴス諸島(エクアドル)など他の海洋島と比べて、面積あたりの固有種率が高く、絶滅率は22%と低い。国際的に絶滅が心配される野生生物も57種に上る。
東京都の石原慎太郎(いしはら・しんたろう)知事は、「世界遺産登録は通過点であって、ゴールではない。小笠原の自然を永遠に保全していくことが重要」との談話を出した。
一方、日本の世界文化遺産は平泉(ひらいずみ)で12件目となった。東北地方では初めてで、震災復興の象徴のひとつとなりそうだ。
登録が決まった平泉は仏教遺産だ。金色堂(こんごうどう)で知られる寺院の中尊寺(ちゅうそんじ)や毛越寺(もうつうじ)。「じ」は日本語で「お寺の意味」。日本の貴族の奥州藤原氏(おうしゅう・ふじわらし)が12世紀ごろに築いた寺院や庭園、史跡で構成される。建造物と自然景観を組み合わせ、仏の国を、空間的に表現している。
これらの仏教遺産は、東日本大震災で大きな被害を受けなかった。しかし。震災の後は参拝客や観光客が減少している。世界遺産登録によって観光客の増加が見込まれる。
タイ人にとっても、平泉観光は、日本人の仏教感を知る良い機会となりそうだ。
ユネスコが登録する世界遺産の総数は、今回の登録分を除くと、911件。日本は小笠原と平泉を含めると、自然と文化の遺産をあわせて16件になった。