長引く避難生活に大道芸の「潤い」を――。日本の首都である東京都は、公認の大道芸人「ヘブンアーティスト」を東日本大震災の被災地へ派遣することを計画している。東京とは、被災地のお年寄りや子供たちが、どのような娯楽を待っているかを、各地で調べる。その結果を分析し、パントマイムや民族音楽演奏など、各地の希望に応じたアーティストに協力を求めて派遣する。
東京都は、「ヘブンアーティスト事業」で培ったネットワークを生かし、芸術家と住民、行政の間を結ぶ「アートNPO」と連携。7月から、現地で具体的にどんな娯楽が求められているか?演技を披露する場所が十分に確保できるか?などを調べる。
具体的な派遣場所は現地調査で得た情報をもとに決める。避難所や仮設住宅、学校、などを想定している。東京都は必要経費として約5400万円(2000万バーツ)の予算を確保した。アーティストらの旅費や宿泊費、食費に充てる予定。原子力発電所の事故が起きた福島県内に派遣する場合は、放射線測定器を貸し出すなど、健康管理にも気を配る。
東京都は震災後、都交響楽団を福島県に派遣してコンサートを開くなどの被災地支援に取り組んでいる。今後も演奏活動による支援を続けていく方針。一方で、人々がもっと親しみやすいマジックなどの大道芸に目をつけた。大道芸は、大きな舞台を用意する必要がなく、ほとんどの道具は手で持ち運びができる。このため避難所や仮設住宅など、公共スペースが小さい場所でも十分に活動できるとみている。
東京都文化事業課でヘブンアーティスト事業を担当する有吉克己(ありよし・かつみ)さんは、「被災者の心のケアには、笑いや驚きも欠かせない。特に子供たちには喜んでもらえるのではないか」と期待している。