これまでファッションショーと言えば、パリやミラノなど西洋が中心で、新しい服のコンセプトを提案してきた。しかし、そこで披露されるファッションは、実際に着るには難しい。モデルたちも、身長178センチ以上で、特にアジアの人々にとって同じような着こなしをすることは現実的に無理だった。
そんな西洋中心のファッション界に対して、日本から強烈な提案が始まった。一般の人々が街で実際に着こなせるような服である「リアル・クローズ」だ。もともと高級既製服のプレタポルテに使われた言葉だが、日本では日常的に着こなせるオシャレなファッションへと変化した。
日本では元々ファッション誌が現実的なファッションを提案してきた。雑誌モデルには普通の女性よりも少し見栄えが良い程度の女性たちが採用されてきた。身長にしても、日本の女性の平均が158センチ程度であることから、日本のトップモデルは170センチまでが中心だ。例えばCanCanのカリスマモデルだった蛯原友里は168センチ、押切もえは169センチだった。これは西洋のモデルよりも10センチ低いが、日本のトップモデルたちの着こなしは、そのまま一般の日本の女性たちが参考にできたのだ。
この日本的な現実感が今、「リアル・クローズ」として結実し、日本のファッションを世界に向けて発信させるようになった。日本における「リアル・クローズ」のイベントは2002年に始まった神戸コレクションが最初とされる。その後、2005年に「東京ガールズコレクション」（TGC）が始り、さらに2006年にはその妹イベント「渋谷ガールズコレクション」（SGC）が始まった。現在では、この3つのイベントが日本のリアル・クローズの3大イベントとなっている。
リアル・クローズイベントは、従来のファッションショーとは全く異なる。ファッションショーは、大手のバイヤーや雑誌ジャーナリストなど招待された一部の限られた業界人に見せるもので、トップモデルたちはファッションショーを活躍の場にしている。観客は数百人程度までだ。
ところが、日本の「リアルクローズ」イベントは、一般の女性たちを対象にしており、入場料も5000円―15000円を取る。これはトップアーチストのコンサート並みだ。イベントのプログラムは、ファッションショーだけではなく、コンサートやコメディーなどで会場を盛り上げる。そして開催者、入場者共に最大の目的は即売だ。観客にとって普段から馴染みのある雑誌モデルや女優たちがキャットウォークし、モデルたちが着ている服や持っている小物をその場で携帯電話を使って購入できるのだ。東京ガールズコレクションや渋谷ガールズコレクションでは、巨大なアリーナを会場として使い、それぞれ２万人以上の観客が入場する。さらにインターネット、テレビとも連携し、会場にいなくても全国から視聴して即売会にも参加できる。
東京と神戸で始ったリアル・クローズのイベントは、恒例イベントとして定着した観がある。名古屋、宮崎といった地方でも開催されるようになってきた。また、北京では２回開催されており、国際化の足がかりとなりそうだ。 by Noboru
